スウェーデンの夏休みは、宿題がない。宿題をがんばる日本人が損をする理由。

  • 画像提供:Pixabay(参照2024-03-14)

  • 「夏休みの宿題」と聞くと、みなさんは、どんなことを思い浮かべますか?

     

    早く終わらせてしまう派、それとも最後に本気を出して片付けてしまう派に分かれることも多く、大人になった今でも、あれこれ先のことを考えて行動している人を見ると、「夏休みの宿題、早く終わらせちゃうタイプだったんだろう。」なんて考えてしまいます。

日本では、学生の時は、宿題をこなすことが当たり前。

単語テストの勉強、計算の練習、歴史の復習。それに加え、夏休みのような長期休暇は、大量の宿題が、復習として出されることが常識といっても過言ではないのでしょうか?

 

さて、スウェーデンの宿題事情は日本とは少し異なります。

「やっぱりなぁ」と首を縦に振った方も多いと思いますが、新しい学期が8月から始まるスウェーデンの夏休みは、6月の頭から始まり8月の半ばまでが多く、約9週にも渡るのです。

 

こんなに長い夏休みでも、宿題なし!

 

長期休暇こそ、いろいろまとめて復習できる大チャンス。

 

「なんだか、もったいないな~。」と感じるのですが、スウェーデン人に言わせると、勉強よりも、もっと大切なことがある!

 

彼らの言う大切なこと、宿題をがんばる日本人が損する理由とは・・・?

スウェーデンに、夏休みの宿題は存在しない。

  • 画像提供:Pixabay(参照2024-03-14)

  • 日本の学校文化について、スウェーデンの十代の若者相手に話していた時のこと。

    「日本の夏休みは、忙しいんだよ。読書感想文、ドリルに習字といろんな宿題があるから。」

     

    私は、もちろんスウェーデンでも同じように大量の宿題が出されているだろう。もしかしたら、民主主義や環境問題について作文を書いたり、ポスターを描くかもしれないと想像を膨らませ、質問しました。

     

    「スウェーデンでは、夏休み、どんな宿題があるの?」

     

    「宿題?ないよ。」

     

    「え・・・。」

     

    夏休み、2ヵ月もある休みに宿題がない?

    思わず、叫んでしまいました。

スウェーデンの、日本でいう、中学校や高校に部活はありません。

青春の代名詞ともいえる部活がなく、宿題もない?

 

毎日、一体、何をしてるんだ!?

 

気分を落ち着けて話を聞いてみると、テニスやセーリングなどのスポーツに打ち込む人もいれば、アニメの鑑賞に時間を費やす人、はたまた、3週間の長い海外旅行といろいろとやることがあるようです。

 

余談ですが、スウェーデンには100,000 を超える湖が存在しており、国土のほぼ 9% を占めています(1)。夏になると、カラッと晴れる日が続き、毎日がお出かけ日和。近くの海や湖に泳ぎに行っては、ピクニックや読書を楽しむ人が多いです。

 

先ほどの若者に言わせると、

 

「夏を楽しめないなんて、もったいない。勉強してる暇なんてないよ。」

 

そう言われてみると、確かに。

 

幸せになるために生きているのだから、目の前の幸せを

いつかの、何かのために、台無しにする必要はないですよね。

 

日本はというと、白熱する受験戦争も相まって、朝から晩まで勉強三昧という人も珍しくはありません。

 

考えてみると当たり前ですが、人生を本当に長い目で見た時、自然に触れた経験や大切な人と過ごした時間がかけがえのない宝物であることは、火を見るよりも明らかです。

スウェーデン、宿題のルール。

  • 画像提供:Pixabay(参照2024-03-14)

  • さて、スウェーデンの教育委員会は、宿題をどのように定義しているのでしょうか?

    ホームページをのぞいてみると、このように書かれています(2)。

     

    宿題に関して、法律やルールはありません。

     

    授業の一環として宿題に取り組むかどうかは教師と校長次第。宿題を出すことを選択した場合は、課題を準備、説明し、教師がフォローアップする必要があります。

     

    宿題は、生徒が受ける権利のある教師主導の授業に代わることはできません。

     

    児童・生徒には、休むための時間が必要で、長期的には、学校と自由時間の良いバランスが、生徒の知識とやる気にプラスに働く可能性が非常に高くなります。したがって、与えられる宿題には、生徒が費やす時間に比例して、生徒の知識を発展させる可能性があることが重要なのです。

     

    生徒が宿題をするのと同じくらい、宿題をフォローアップすることも重要です。教師が宿題にコメントしてフォローアップすることで、生徒は努力が評価されたと感じるのです。

    北欧の調査では、宿題を添削して返却してもらうよりも、宿題について話し合える方が、生徒の学習にとって有益であると結論付けています。

    例えば、宿題の内容が、授業内の議論のための準備である場合、それは授業内でのモチベーションを高める効果をもたらします。

ホームページを読んで驚くのは、宿題は学校ごとで先生の裁量に任せられていること、休息の重要性が強調されていることでしょうか。スウェーデンでは、教師が教科書を選ぶので、当たり前かもしれませんが、宿題にも教師の裁量や責任が強く反映されています。

 

そして、「やりっぱなし」を許さない点。

日本の場合、夏休みの宿題は先生からのフィードバックをもらうことなく黙々と取り組む必要があり、分からない問題にぶつかってしまった時など、生徒からしてみれば苦痛でしかありません。

 

そう考えると、スウェーデンの、夏休みは宿題がないというシステムも悪くはないと思えてきます。

スウェーデンらしい?宿題を取り巻く問題。

  • 画像提供:Pixabay(参照2024-03-14)

  • どの国も、多かれ少なかれ何かしらの問題を抱えていますよね。

    スウェーデンの教育現場を取り巻く問題といえば、移民問題。

     

    スウェーデンで、移民や難民が問題を起こしているというような言い方をすれば、レイシストだと非難されることもあり、だれも公に文句は言いません。しかし、年を追うごとに、移民に厳しい政策を打ち出す政党が投票数を伸ばしていることから、移民問題が無視できないようになってきていると感じます。

さて、そこで問題になっているのが、教育格差。移民のバックグラウンドを持つ生徒の成績が低いことがずいぶん前から指摘されているのです。これは、学校を卒業した後の進路、就職などにも影響を及ぼすため、解決すべき問題と言えます。

 

それに加えて、最近は、ギャング間の闘争による爆発が、治安の悪い地域の学校の周りで起きており、生徒に大きな精神的ダメージを与えています。

 

もちろん、このような治安の悪い地域に、進んで住みたいという人はおらず、結果的にスウェーデン人と移民が異なる地域に住む「居住地域分化現象」(セグリゲーション)が存在しています。

 

ご想像の通り、移民のバックグラウンドを持つ子供にとって、家庭で話されていないスウェーデン語で授業を受けるということは、大きなハンデ。それに加えて、学校の雰囲気も好ましくないことが多く、決まった先生ではなく、臨時の先生が授業を担当することもあるようです。

 

もちろん、宿題どころではありません。

 

では、家庭での学習はどうでしょうか?日本だと、家族が勉強を見てくれたり、お金に余裕のある人は家庭教師、塾に通うこともありますよね。

 

スウェーデンには、塾が存在しません。

 

難民の中には、スウェーデンに来て初めて文字を学んだという人もいて、そういった人にスウェーデン語を教えている知人いわく、「大人になってからスウェーデン語の基礎を学ぶのに、最低でも7年かかる」。宿題を見てあげるうんぬんではありませんよね。

 

学校の勉強が全て、なのです。

 

なんだか、調べていて悲しくなってしまいました・・・。

ということで、希望の光である、教育格差を埋めるための取り組みの一つをご紹介します。

 

Göteborg(ヨーテボリ)にある、Biskopsgården(ビクコスプガーデン)という治安の思わしくない地域では、授業中に一定の基準を満たすことのできなかった生徒に対して、放課後に集中的な指導が行われており、生徒の自信と成績の向上に寄与したということです(3)。

このような先例があると、他の似たような問題を抱える学校も解決に向けて動くことができますね、よかった!

 

さて、宿題どころではない学校が、スウェーデンらしいと言ってしまうと、変に聞こえてしまうかもしれません。でも、実際に毎日ニュースを聞いていると、教育格差を取り巻く移民問題は根が深く、そもそも宿題を出せる日本の学校環境について、考えさせられました。

夏休みの宿題をがんばる日本人が、損する理由。

  • 撮影:きよ 「スウェーデン、朝焼けの海」

  • ウサギとカメの昔話では、休まず、コツコツ努力するカメがウサギを打ち負かします。
    ダラダラせず、コツコツ努力をして最後は勝利を手に入れる!

    休みだからこそ、コツコツ努力すべき。むしろ大量の宿題をやりとげることは美徳であり、子供たちの将来につながると思っていました。スウェーデンがウサギで、日本人がカメというところ。

    スウェーデンの若者と話すまで。

    スウェーデンの若者と話して、かけがえのない夏、木漏れ日、ヒヤッとする湖、目の前の現実を生きる大切さに、気付かされました。

そういえば、スウェーデン人は仕事のオンとオフの区別をハッキリつけていて、集中して効率よく取り組むのが得意。趣味も充実させています。

 

将来、幸せになるために、たくさん勉強して、いい成績を取っていい大学へ行って・・・。

 

大人になって、小学校の成績が幸福度に影響していると感じた人はいるでしょうか?

 

それより、小さなころに見た壮大な海、家族とのバーベキュー、回転ずしで食べすぎたり、友達とのカラオケ、気になるあの人との映画館・・・数え上げるとキリがありませんが、そういった幸せな記憶が、大人になって、つらい現実に直面した時、ひと踏ん張りするのを助けてくれると思います。

 

日本人の真面目さは、幸せを先延ばしにしている気がします。

 

せっかくの子供時代、時間をたっぷり使って思う存分、今を楽しむべき!

夏休みの宿題に追われていては、もったいない。

 

そんな風に感じた、スウェーデンの夏休みの宿題事情でした。

 

参考文献

 

(1)Sjöar och vattendrag (参照2024-03-08)| SLM

(2)Läxsor(参照2024-03-08)|skolverket

(3)”Ärligt – de vill inte ha invandrarbarn i sina skolor”(参照2024-03-08)|Grundskolläraren

WRITER
    • kiyo
    • スウェーデン第二の都市Göteborgで、息子と夫と3人暮らし。「毎日、機嫌よく。」をモットーに育児&勉強中です。私の気づきや学びが、誰かの「日々の小さな幸せ」に繋がれば幸いです。

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