日本が好きなスウェーデン人。
一度は日本に住んでみたい!とは言うものの、日本の「残業」の話を聞いてやっぱり旅行で十分と諦めてしまう人が多いように思います。
残業時間が、そもそも最初からお給料に含まれている「みなし残業(固定残業)」制度。スウェーデンに住んではじめて気が付いた、日本独特の制度と言えます。
通常、従業員が労働時間外に業務を行えば、企業は基本給のほかに残業代を支払いますよね。でも、企業がこのみなし残業制度を導入していると、一定時間内の残業代が給与に含まれているため、従業員に残業代を支払う必要がなくなるのです。もちろん、あらかじめ定められた時間を超えた残業が発生した場合には、別途残業代を支払う必要があります(1)。
私は、このみなし残業制度を採用している会社で働いていたのですが、職場には定時で帰る、むしろ帰ってもいいという雰囲気はみじんもなく、残業続き。
「さっさと帰ってゆっくりしたい・・・。」と心の中で叫ぶことはあっても、
現実は、「誰も帰ってないし、自分が一番先に帰るのもなぁ。どう思われるだろう?」との不安が胸を過ぎり、定時ピッタリで帰ることは、本当にまれでした。
スウェーデンに、みなし残業制度は存在していません。
むしろ、IT企業を中心にフレックスタイムを導入している場合が多く、その日の作業が終わると、早々に切り上げて退社するということも普通のようです。
今回は、IT企業でエンジニアとして働く友人の話も交えながら、スウェーデンのIT企業の天国ぶりをご紹介したいと思います。
まず最初に、フレックスタイムとは、始業時間、終業時間を個人単位で自由に設定できることで、全社員が必ず出社している必要のあるコアタイムが規定される場合もあります。
フレックスタイムを導入しているスウェーデンのIT企業で務める友人の場合、1週間の労働時間は40時間。朝の7時〜9時ごろから仕事を開始し、その日の作業が終わると退社。日によって労働時間は異なり、だいたい6時間~9時間ほど。もちろん、リモートワークで家から仕事をする日もあるそうです。
ちなみに、一日の仕事量を決めるのも自分。
「例えば、仕事が早く終わったとして、何となく帰りづらくない?」と質問したところ、
「ない。」と即答をいただきました。
やることがないのに、職場に残っていても、仕方ない。
ここで一つ。忘れてはいけないのが、仕事量が適切だということです。
与えられた業務が多すぎたら、終わらないのは目に見えていますよね。
ちなみに、友人の上司は「あと、ちょっと。」と言って「ついつい」長く働いていることもあるそうですが、別の日に早く仕事を切り上げているよとのこと。
ちなみに、スウェーデン人の中には日本の「企業戦士」なるものにロマンと憧れを抱き、日本で残業漬けの日々を送ってみたい!という変わり者も、ごく少数ですが存在しており、
スウェーデンでは残業が珍しいことの裏返しと言えますね・・・。
新人研修、同じ会社の上司が行う社内研修、外部からプロを招いて行う社外研修と、研修と名の付くものには事欠きません。
冒頭でもお話した、私が働いていた会社では「スケジュール帳研修」があり、外部から講師を招き、スケジュール帳の活用術、つまりいかに効率よく仕事をこなすのかについて学びました。それが、直接、定時で上がることへ貢献はしませんでしたが・・・。
さて、スウェーデンに話を戻し、実際に、昇給や仕事の効率を上げることにつながるスウェーデンの研修をご紹介しましょう。
まず、研究者として働く友人の場合、全員が一緒に論文を書く日があるとのこと。
耳にされた方もいるかもしれませんが、「ポモドーロ・テクニック」を取り入れながら、みんなでひたすらパソコンをカタカタ言わせる時間を取るようです。メールなどはチェックせず、研究に集中するのが目的なんだとか。
個別で行う作業でも、休憩時間はみんなでfika(フィーカ)で休憩しながら情報交換をするそうで、みんなで一緒に集中することで、いつもよりやる気が湧くそうです。
せっかくなので、ポモドーロ・テクニックを少しご紹介しましょう。
1.タイマーを25分に設定して作業を開始
2.タイマーが鳴ったら、5分の休憩をとる
3.タイマーを25分に設定して作業を開始
※3時間に一度は、20分ほどの長めの休憩を取る。
ちなみに、私もこの記事をポモドーロ・テクニックを使いながら書いているのですが、25分間の集中力は半端ではありません!
続いて、IT企業で働く友人の話です。
仕事に関係するスキルを向上させるための勉強時間が、週に4時間割り当てられているそうで、これは使ってもいいし、使わなくても大丈夫。
ただ、この勉強時間を使ってスキルアップした場合、Löneförhandling(ローンフォルハンドリング)、日本語だと給与交渉、この際にお給料を挙げてもらうための交渉材料として、使うことができるそうです。
スウェーデンの場合、給与の交渉は、通常、年に1回が普通ですが、面談がいつ、どのように行われるかは企業によって異なります。
ちなみに、スウェーデンでは、インフレーションで物価が上がっていることを考慮し、そもそも、お給料は毎年高くなっています。それに加え、向上させたスキルを武器に昇給の交渉ができるというのはいいですね。
スウェーデンのIT企業で働く友人の例を基に、今回はスウェーデン人が「残業しない」理由をご紹介しました。
仕事量が適切で、時間内に終わるものであることに加え、そもそも、スウェーデンに「みなし残業(固定残業)」制度は存在しないことが大きく影響しているのではないでしょうか。
残念ながら、残業をして少しでも生活費を稼がないと生活が回らないという声も耳にします。日本社会全体の問題で、選挙を通して変えていく必要がありますね。
明日からでも、できること。言うは易し行うは難しと言いますが、スウェーデンで当たり前の「やることがないのに、職場に残っていても、仕方ない。」を行動で示す人が増えると、残業が過去のものとなり、変わり者のスウェーデン人のように「企業戦士」なるものに憧れを抱く世代も出てくるかもしれません・・・。
(1)みなし残業(固定残業)制度とは?企業のメリットと導入時の注意点
(参照2024-1-19)|OBC360